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話題の研究 謎解き解説

新手法で、掘削データを使って岩盤強度を簡単に早く測定

足元に広がる地面、すなわち地球の岩盤は、どれくらいの力がかかると壊れるのか。その度合いを岩盤強度といい、これを知ることは地球の様々な理解につながります。このたび、掘削しながらその岩盤強度を求める手法が開発されました。

海底下の岩盤強度を掘削データから直接測定する手法を開発
-南海トラフ巨大地震断層上部の岩盤強度が明らかに-

論文タイトル:Continuous depth profile of the rock strength in the Nankai accretionary prism based on drilling performance parameters

  • 新手法では、「ちきゅう」などの掘削船を使って海底を掘削しながら岩盤強度を求められる。
  • 従来の実験で求める手法よりも新手法の方が簡単で早く、連続的なデータを得ることができる。
  • 新手法で東南海地震の震源域の岩盤強度を調べたところ、海底下2,200~3,000mは予想よりも硬く、ひずみエネルギーをためる可能性があることがわかった。

新手法をScientific Reports誌に発表した濱田洋平研究員に聞きます。

【目次】
様々な理解の一助になる岩盤強度
掘削パラメータから岩盤強度を計算
浅部まで硬くなっていた付加体
目指すは、充填剤

様々な理解の一助になる岩盤強度

こんにちは。岩盤強度を求める手法を開発されたそうですね。そもそも岩盤強度とは、何でしょうか。


写真1 濱田 洋平研究員

岩盤強度とは、岩盤にどれくらい力がかかると壊れるかを表します。岩盤強度が大きいほど固いので壊れにくく、反対に岩盤強度が小さいほど柔らかいので壊れやすいことを意味します。

岩盤強度を知るとどのようなことにつながるのですか?

岩盤強度は地球科学において最も基本的かつ重要な情報の一つです。様々な理解につながりますが、ここではプレート沈み込み帯の分野で紹介します。

はるか彼方から移動してきた海洋プレートが、海溝やトラフ(水深6000mより浅い海溝)で大陸プレートの下に沈み込んでいるところを“プレート沈み込み帯”と言います。海洋プレートが沈み込むとき、上の堆積物が大陸プレートのふちで引きはがされて陸側に付け加わります。この部分を付加体といいます(図1、動画1)。


図1 プレート沈み込み帯でできる付加体のイメージ(『図解 プレートテクトニクス入門』木村学/大木勇人を一部改変)

動画1 砂を使って付加体ができていく様子を再現した実験。透明ケースの中の地層は、海洋プレート上の堆積物を表す。透明ケースの底が画面右から左へ動き、地層が壁に押し付けられていく。これが、海洋プレートの沈み込みでできる付加体のイメージ。(撮影者 海洋掘削科学研究開発センター 高下 裕章 研究生(東京大学大学院))

プレート沈み込み帯がそばにある日本列島(図2)は、その付加体を基礎としてできています(図3)。この付加体の形成は現在もなお続いています。


図2 日本周辺のプレート沈み込み帯

図3 西南日本の付加体(『図解 プレートテクトニクス入門』木村学/大木勇人を一部改変)

付加体の岩盤強度の時空間変化を明らかにすれば、付加体の形成過程を知る手掛かりとなり、私たちの住む地面がどのようにできたのかを知ることにつながります。さらに、過去のプレートの動きを探ることもできます。

また、プレート沈み込み帯には巨大地震が繰り返し発生する地震発生帯があります。海洋プレートが大陸プレートの下に無理やり沈み込んでくるので、付加体を含む大陸プレートの端は大きな力を受けて歪みが生じ、力(応力)やエネルギーがたまります。それが限界に達したときに、大陸プレートが元に戻ろうと断層が一気に滑って地震が発生するのです(図4)。


図4 プレート境界で発生する地震

ならば、プレート境界は現在どれくらい危険なのか。仮に震源域で掘った孔にひずみ計を設置して、1年で0.1%ひずむと計測されても、これだけでは断層が危険な状態かどうかは判別できません。けれど岩盤強度もわかれば、岩盤があとどれくらい耐えられるのかが推定できるようになるのです。

岩盤強度は広くダイナミックなことを知る手掛かりになるのですね! これまではどのように調べられていたのですか?

従来は、掘削船で海底下から岩石試料を採取し、海底下の温度や圧力を推定した上で強度を実験で求めていました。試料採取そのものが大変ですし、実験するために試料を成型します。手間も時間もかかりました。さらに、試料は限られデータは断続的でした。

大変そうですね。

そうした課題を解決したのが、今回の新手法です。