「かいめい」大解明!推進機関編と調査研究設備編に続き、今回は生活編です。
航海中は、数日から数か月間にわたって船に乗りっぱなしです。船上では、どんな生活を送るのでしょうか。今回は食事を用意する司厨長(しちゅうちょう)のお話を始め、生活空間を紹介します!
柳谷:厨房からですね。ちょうど食事の準備中のようです。
柳谷:我々もいただきましょう。食堂は厨房の隣です。
柳谷:そうですね。JAMSTECには船長や首席研究者などの座る席が決まっている船もありますが、本船ではそれを無くしました。みなさん自由に座って和気あいあい食事をとっています。
また、「ちきゅう」を除くJAMSTECの他の船では1人1人に料理が並べられますが、本船は自分で好きな量をお皿に盛る「ビュッフェ」スタイルにしました。とは言っても食べ放題ではなく、メインのおかずは「1人3個まで」などと決まっています。ごはんやお味噌汁、サラダ、サイドメニューなどは自分で好きなものを好きなだけ食べられます。
柳谷:従来の個別に食事を並べるスタイルでは、乗船者全員に同じ量の食事が供食されます。体力をつけようと多めによそう慣習から、食べ残しも出てしまいました。しかしビュッフェスタイルにすることで、そうした食べ残しはほとんど出なくなりました。
柳谷:では、食料の仕入れから調理供食まで食事に関する全責任を負う竹村龍栄司厨長に、お話を聞きましょう。
竹村:ずっと船の厨房で料理をして、もう45年になります。平成6年ごろにJAMSTECの船に乗船するようになってから「なつしま」、「よこすか」、「かいよう」、「淡青丸」、「白鳳丸」、「新青丸」に乗りました。
竹村:本船はビュッフェスタイルなので個別に盛り付ける必要が無くなりましたが、その分だけ別の仕事として掃除が加わった点が、仕事としての大きな違いです。38部屋ある研究者の部屋など、調理の合間をぬってみんなで掃除をします。
本船の設備は使い勝手が良いです。コンロはIH(写真3左)です。焼いたり蒸したりするにはスチームコンベクション(写真3右)を使いますが、あれは本当に便利ですね。仕事が早い。でも料理を並べる際に使うウォーマーが、もう1台あれば嬉しいです。いまはフライドポテトやスパゲティなどがどうしても冷めてしまうのが残念です。
竹村:それから、他の船に比べても本船は朝昼晩と野菜を多く出します。たぶん他の船の2.5倍は消費しています。
竹村:献立は私が決めます。レシピは、先輩に教えてもらったものや本から探します。でもレシピ通りに作るのではなくて、一工夫します。そういう考え方をもって料理しないと進歩しませんし、みなさんにおいしいものを食べさせようと思えばそういう心掛けが必要です。時にはみなさんに、「これなに?」って不思議がられることもあります。
竹村:冷凍食品は使いません。本船の冷凍冷蔵庫は大きく食材も長持ちするので、色々自分で料理を作る上でも大助かりです。昔は、モヤシやカイワレを船上で育てたりもしました。30㎏の大豆を積んで、豆腐を作ったこともありました。
それから、やっぱり味付けにはすごくこだわります。「これでいいわ」じゃなくて、「もうちょっと塩かな、砂糖かな」って。工夫すればいい味が出ます。ただ、塩気については、自分が試食して少し足りないくらいにします。
竹村:自分を含めて4人です。
竹村:本船の司厨部は、選ばれし戦士。なんでもできる人たちですから。
柳谷:食糧の保管庫は、食堂を出た向こうです。野菜庫、肉庫、魚庫があります。出港前に、トラックから大量の食糧を船に積み込むんですよ。
柳谷:こちらは、乾物庫です(写真4)。
柳谷:こちらが、研究航海の指揮を執る首席研究者の部屋です。打ち合わせスペースの向こうにベッドと机、そしてユニットバスがあります。
柳谷:ベッドの上にある飾りは、毛布で作った“松竹梅”です。花毛布と呼ばれるおもてなしの一つです。普通はベッドメイキング(シーツやまくらカバー、掛布団カバーの付け替え)は自分でしますが、首席研究者の部屋は司厨部の方がセットしてくれます。
柳谷:他の方が泊まる部屋は、こちらです。ベッドに机、棚、洗面台などがコンパクトに納められています。
柳谷:こちらが男性用の浴室です。
柳谷:調査研究内容によっては、こんな張り紙(写真6)が掲載され使用できない時間帯もあります。
カメラマン:ド○えもんが何でもできるように、「かいめい」も何でもできるようにってことかなあ。
柳谷:うーん。。。?
柳谷:はい。申請して船内LANにつなげれば、メールもインターネットも使えます。
柳谷:船内にはリサーチルームと呼ばれる部屋もあり(写真8)、ミーティングや研究発表の場にもなっています。
柳谷:あれはフェンダー(防舷材)と言います。船が着岸する際、岸壁に直接ぶつかって船体が損傷しないように、船に装備しておくゴム製のクッションのようなものです。本船は調査研究設備編で話したように後部作業甲板で幅が広がっているため、着岸時の岸壁と本船の間のスペースが、船首側と船尾側で違います。港によっては岸壁にフェンダーが付いていますが本船では使えないことが多いため、フェンダーを常に船に搭載して使っています。
柳谷:船が風波で岸壁から離れたり前後に移動しないように、直径40mmの係船索(ロープ)で船が岸壁のビットとつながれました。タラップが降ろされれば、入港作業は完了、下船できます。
柳谷:私は運航・工務グループの「かいめい」担当として、いつどこでどういう航海をこんな具合にしましょう、という計画案を立てて、各関係者と調整する仕事をしています。
本船は、色々な観測機材を搭載できる船です。それぞれの観測機器を使用して目的を達成できることが本船にとって良い使い方です。ですがそのためには、まず準備としての慣熟訓練航海をしっかり進めていかなければなりません。現在はその段階です。しっかりこなしていきたいと考えています。
「かいめい」は、2016年9月現在、調査観測機器の試験や慣熟訓練中です。調査研究航海は2017年度から始まる予定です。様々な調査・探査のニーズにこたえ地球の謎の解明に挑む「かいめい」の、今後の活躍にご期待ください!