2009年11月30日発表
スケーリーフットがいっぱい!
深海のふしぎな巻貝の大群集 発見!
インド洋の水深2,000mの海底。静けさとやみにつつまれたその海底には、熱水をふきだす
写真1:熱水噴出孔
水深2,000mのインド洋海底にある熱水噴出孔からは、熱水が
その理由は、そこにエネルギー源(解説1)があるから。では、何がエネルギー源なのでしょう?まずは海の浅いところを思いうかべてください。浅い海にはこんな
図1:浅い海の食物連鎖
一方、水深2,000mの熱水噴出孔のまわり。日光もとどかずまっくら(解説2)なので、浅い海のような食物連鎖はありません。では何がエネルギー源なのでしょう。そこにあるのは、熱水からただよってくる
熱水噴出孔のまわりには、硫化水素などの有害な成分を、生き物にとって栄養分となるエネルギー源に変えることのできる
図2:熱水噴出孔のまわりの食物連鎖
つまり、浅い海では日光を、熱水噴出孔のまわりでは地球内部の化学物質をエネルギー源とする食物連鎖があるのです(図3)。
図3:浅い海と熱水噴出孔のまわりの食物連鎖
ところで、そんな熱水噴出孔のまわりの生き物の中に、熱水中の成分から
写真2:スケーリーフット
スケーリーフットのサイズは大きいもので約4.5cm
カタツムリのような形の黒いカラから出ている黒いよろいのような部分は、なんと硫化鉄でできたうろこです。うろこにおおわれた足をもつことから、スケーリー(うろこ)フット(足)と名付けられました。このうろこは丈夫なので、ハサミをもつエビやカニにおそわれても心配いりません。また最近になって、黒いカラの表面も硫化鉄におおわれていることがわかりました。つまり、スケーリーフットは体の表面すべてを鉄でコーティングしているのです。そして、体内の食道には共生細菌を棲まわせていて、これらにイオウや鉄などをあたえて、これらから栄養分となるエネルギー源を受けとるのです。
これまで、スケーリーフットについては様々な研究がされてきました。けれども、うろこのできるしくみや1つの熱水噴出孔でしか見つからない理由などについてはよくわかっていませんでした。これらを解き明かそうと、研究者は今年(2009年)11月に
図4:スケーリーフットが棲む熱水噴出孔
スケーリーフットは、うろこに守られた足で熱水噴出孔のまわりにべったりとはりつきます。この上に、カイレイツノナシオハラエビやアルビンガイなどがおり重なるようにして群がります(図4)。
調査の結果、数千匹以上とみられるスケーリーフットの大群集を発見しました(図5、写真3)。
図5:
スケーリーフットの大群集を見つけた場所
写真3:
数千匹以上からなるスケーリーフットの大群集
(まわりの白いものはエビです。)
しかもこの大群集は、熱水の
研究者は、実験や飼育からとれたデータを
解説1:エネルギー源
人間でいえばごはんです。
解説2:
太陽の光は、水深200mより深い海には届きません。
解説3:
「住む」と「棲む」のちがいは?
「住む」は人々がそこで生活すること。「棲む」は海の生き物や鳥などがそこで生活することです。
解説4:しんかい6500
日本が世界にほこる有人潜水調査船です。もぐれる深さは6500mで、世界で1番。海底の地形や地質、深海生物の調査などを行います。