災害記念碑デジタルアーカイブマップのお知らせ

2019年 8月30日
国立研究開発法人海洋研究開発機構
超先鋭研究開発部門 高知コア研究所
国立研究開発法人防災科学技術研究所
マルチハザードリスク評価研究部門
国立大学法人高知大学
海洋コア総合研究センター

1. ポイント

過去に大きな被害をもたらした地震・水害などの記録を刻む石碑・木簡等の総合情報をウェブ地図上で公開。防災週間を契機にお知らせ。
位置、概略、3Dデジタルモデルをリンクして災害記念碑情報を立体的に表現。
現在、高知県、徳島県、東北地方の災害記念碑を公開。順次コンテンツを追加予定。

2.概要

国立研究開発法人海洋研究開発機構(理事長 平 朝彦)超先鋭研究開発部門 高知コア研究所の谷川亘主任研究員、国立研究開発法人防災科学技術研究所(理事長 林春男)マルチハザードリスク評価研究部門の内山庄一郎研究員・鈴木比奈子研究員、及び国立大学法人高知大学(学長 櫻井 克年)海洋コア総合研究センターの浦本豪一郎特任助教らは、共同研究「三次元形状復元技術を活用した南海地震津波碑のデータベース構築計画」の一環として災害記念碑デジタルアーカイブマップ(図1)を構築し、ウェブ公開しています。

本マップは現在、四国沿及び東北地方の沿岸部に建立する地震災害や水害を記録した災害記念碑の位置情報を柱とした総合情報を掲載しており、順次追加予定です。災害記念碑の設置位置は、過去の津波や洪水の到達地点を意味する場合も多く、「その場所に建てられたこと」自体にも資料的価値があります。さらに、災害記念碑の文面は過去に発生した巨大地震や台風による被害状況を知る重要な資料となり、これらは将来発生する巨大自然災害への警鐘を伝えるシンボルとしても機能します。過去の災害を学習する入口として多くの方々に本マップを活用していただくのが目的です。

掲載ウェブサイト(図1):災害記念碑デジタルアーカイブマップ
https://dil-db.bosai.go.jp/saigai_sekihi/

3.背景

過去の地震災害や大水害の記録は古文書だけではなく、野外に建立された石碑にも多く残されています。各地で建立されている地震津波碑は、被災者を供養するだけでなく、災害状況を正確に記録して、後世に災害の恐ろしさを伝え、防災意識を向上させる機能的な役割も持っています。しかし、石碑が建立されてから年月が経過し、いつしかその役割は忘れ去られ、碑の存在すら知られない状況に陥っていました。一方近年では2011年東日本大震災後に地震津波碑、2018年西日本豪雨後に水害碑といった災害記念碑の価値が再評価されはじめています。特に、過去の津波進入区域や洪水の氾濫区域を伝える機能的な側面に注目が集まっています。

本調査の過程で、安政地震後や明治時期の以前に建立された石碑も多く存在し、風化や植生により表面が傷み、判読困難なものも存在することも明らかになってきました。一部の石碑は、管理者不在のため、無防備に設置されています。保管方法の議論も行われていないため、損傷・消失してしまう可能性もあります。

そんな中、3次元コンピュータグラフィックスの技術が進化し、対象物の3次元形状をコンピューター上で精密復元できる技術(SfM: Structure from Motion)の普及が進んでいます。この技術は文化財発掘現場や防災分野へ応用され、最近では3Dグラフィックスモデルによる災害記念碑の現状の保存も進められています(図2)。

4.マップの利用方法

災害記念碑デジタルアーカイブマップ(図1)では、災害事例ごとに石碑の位置を地理院地図上に示しており、地図上のアイコンまたは左のサムネイルをクリックすることで石碑の概要が表示されます(図3)。碑文の内容や3Dデジタルモデル(図2)は、石碑概要ページの[More info]をクリックしてご覧ください。

5.今後の展望

現在、掲載している災害記念碑は四国と東北地方(図4)の一部です。今後、全国各地の災害記念碑の情報を収集するだけでなく、様々な災害コンテンツとリンクさせ、防災・災害ポータルサイトとしての機能を充実させていく予定です。

本コンテンツ作成は、JSPS科研費JP15K12487の助成を一部受けて実施されています。

図1

図1 災害記念碑デジタルアーカイブマップの表⽰例(クリックするとサイトトップページへ移動します)


図2

図2 地震津波碑デジタルアーカイブサイト
(海洋研究開発機構HP http://www.jamstec.go.jp/res/ress/tanikawa/index.html


図3

図3 石碑の概要画面(左側に表示)


図4

図4 三陸沿岸の津波碑
(防災科学技術研究所 自然災害情報室HP https://dil.bosai.go.jp/disaster/2011eq311/sekihi.html

お問い合わせ先:

(本マップ及び地震津波碑デジタルアーカイブサイトについて)
国立研究開発法人海洋研究開発機構 超先鋭研究開発部門 高知コア研究所
 主任研究員 谷川 亘 電話:088-878-2203 E-mail:tanikawa@jamstec.go.jp

(三陸沿岸の津波碑HPについて)
国立研究開発法人防災科学技術研究所 マルチハザードリスク評価研究部門
 特別技術員 鈴木 比奈子 電話:029-863-7810 E-mail:hinasuzuki@bosai.go.jp

(その他)
国立研究開発法人海洋研究開発機構 超先鋭研究開発部門 高知コア研究所 管理課
 電話:088-878-2264  E-mail:kochicore@jamstec.go.jp

トピックス一覧に戻る