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プレスリリース

2020年 1月 29日
国立研究開発法人海洋研究開発機構
国立研究開発法人産業技術総合研究所
国立大学法人東京大学大気海洋研究所/大学院新領域創成科学研究科
日本地球掘削科学コンソーシアム

「ちきゅう」による遠州灘掘削の速報:長期間の連続した地震記録試料を採取

国立研究開発法人海洋研究開発機構(理事長 松永 是、以下「JAMSTEC」)は、日本地球掘削科学コンソーシアム(注1)と共同で実施する「地球深部探査船「ちきゅう」(注2)を用いた表層科学掘削プログラム」(注3)の一環として、南海トラフ東端部の遠州灘において、2020年1月5日から1月8日まで、長期の地震発生履歴を解明するための掘削航海を実施しました(図1)。JAMSTEC、国立研究開発法人産業技術総合研究所、国立大学法人東京大学大気海洋研究所/大学院新領域創成科学研究科は、掘削試料の船上解析を進め、その概要を明らかにしましたので、速報でお知らせします。

1.実施内容

南海トラフの巨大地震発生領域の東端部を構成する遠州灘では、他の南海トラフ海域とは異なる間隔で歴史地震が起きていたことが知られています。南海トラフでは大陸プレートの下に海洋プレートが沈み込み続けており、その境界が高速でずれ動くときに地震が発生すると考えられていますが、遠州灘ではこの2枚のプレートの間に地形的な高まりが沈み込んでいるために地震の発生が抑制され、他の海域よりも地震の発生間隔が長くなっている可能性があります。その証拠は海底堆積物記録として残っているはずですが、これまでは、それを検証する十分長い試料の採取が実現していませんでした。

このたび遠州灘で、もっとも精度の高い地層記録が保存されていると期待される海底の凹地において、「ちきゅう」による連続コアリングを実施し、タービダイト(注4)という地震によってできた地層の採取に成功しました。

2.結果概要及び今後の展望

「ちきゅう」の掘削により厚さ80 m以上の連続した地層を回収しました。そのうち上部のおよそ40 mの地層におよそ200枚のタービダイト層が周期的に挟在していました(図2)。既存研究の堆積速度に基づくと40 mの地層の形成には4−5万年かかり、ここに約200枚のタービダイトが挟在するので、平均的なタービダイトの堆積間隔は200年程度です。地震性と考えられるタービダイトが、4−5万年の堆積期間分、連続的に採取されたのは初めてです。また、陸上の津波堆積物では数万年前になると海面の高さが変動する影響で記録が残りにくいため、長期の記録は非常に貴重です。この連続記録は「ちきゅう」の水圧式ピストンコアリングシステム(注5)により未撹乱で地層を採取できたことによります。

今後、採取した地層の詳細な年代を測定し、タービダイトの堆積間隔を詳細に検討していく予定です。4−5万年間の十分長い時間の連続的なデータに基づいた解析により、今後、遠州灘の地震発生間隔について新たな知見が得られることが期待できます。

注1:日本地球掘削科学コンソーシアム(Japan Drilling Earth Science Consortium : J-DESC)
地球掘削科学の推進や各組織・研究者の連携強化を目的として、国内の大学や研究機関が中心となって2003年に設立されたコンソーシアム。主な活動は、地球掘削科学に関する科学計画・研究基盤の検討、関係機関への提言、地球掘削科学に関する科学研究等の有機的な連携、研究人材育成、国際プロジェクトへの支援および協力、情報発信・普及啓発の実施等。

注2:地球深部探査船「ちきゅう」
JAMSTECの所有する科学掘削船。海底下をより深く掘削するため、ライザー掘削技術を科学研究に初めて導入。巨大地震・津波の発生メカニズム、海底下生命圏、地球規模の環境変動の解明などに挑戦している。

注2:地球深部探査船「ちきゅう」

注3:地球深部探査船「ちきゅう」を用いた表層科学掘削プログラム(Chikyu Shallow Core Program: SCORE)
JAMSTECとJ-DESCが共同で運営する科学掘削プログラム。元から予定された航海で「ちきゅう」が海域に出る機会の往復路などを有効活用し、短期間で実施できる海底表層の科学掘削(ピストンコアリング)を行う仕組み。J-DESCが会員を対象に掘削提案の募集及び審査を行い、その審査を経て推薦された提案の中からJAMSTECが実施可能なものを選定し掘削を実施する。

注4:タービダイト:海底斜面崩壊や海底堆積物のまきあげなどによって形成された土砂を含んだ水塊が重力によって斜面に沿って流下する流れから堆積した地層。小さな粒子ほどゆっくり沈むため、タービダイトは下部ほど粗粒、上部ほど細かくなる粒度変化が見られる。

注5:水圧式ピストンコアリング:水圧によるピストン作用によりナイフのように鋭いパイプ先端を地層に突きさし、コアを採取する方式。ドリルビット(掘削刃)を回転させることなく、コアを採取することが可能。

図1

図1.  遠州灘海域(左下の黒四角枠)と、掘削地点(赤丸)。水深2,414 mの地点において掘削を実施した。

図2

図2. 採取された地層の写真。黒色はタービダイトの砂の部分、タービダイトが繰り返していることが分かる。横の数字は海底面からの深さ(単位m)を示す。

(研究内容及び研究成果について)
国立研究開発法人海洋研究開発機構
海域地震火山部門
上席技術研究員 金松 敏也
国立研究開発法人産業技術総合研究所
地質調査総合センター 地質情報研究部門
首席研究員 池原 研
(地球深部探査船「ちきゅう」及びSCOREについて)
国立研究開発法人海洋研究開発機構
研究プラットフォーム運用開発部門 企画調整部総括グループ
(報道担当)
国立研究開発法人海洋研究開発機構
海洋科学技術戦略部 広報課
国立研究開発法人産業技術総合研究所
企画本部 報道室
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