海で科学する ―観測がすすめる地球環境の理解―

プログラム

13:00~13:10 開会挨拶・趣旨説明
-講演会の聴きどころ-

地球環境部門 海洋観測研究センター長
纐纈 慎也

13:10~13:40 海洋循環は渦が主役
地球環境部門 海洋観測研究センター 
主任研究員
勝又 勝郎

海水の流れが海流です。観測データが少なかった 50 年ほど昔は数少ない水温や塩分の観測から海の中に川のような滔々とした流れがあると考えられていました。データの数は船舶観測が盛んになった 1980年代と自動観測ロボット(アルゴフロート)が普及した 2000年代後半に急激に増加します。すると、直径100 km程度の渦が変形しながら移動していくという海流の実態が明らかになってきました。本講演では渦の働きから考える最新の海洋大循環像をご紹介します。
13:40~14:10 海の大きな炭素貯蔵庫:溶存有機物
地球環境部門 海洋観測研究センター 
研究員
重光 雅仁

海の中に存在する溶存有機物の炭素量は、大気中の二酸化炭素の量とほぼ同程度です。したがって溶存有機物の詳細を調べることはとても重要です。溶存有機物の究極的な起源は、植物プランクトンの光合成によって作られる有機物です。しかし面白いことに、海の中の溶存有機物の大半は平均的には数千年程度と大変古い年齢を持ち、生物活動とは積極的に関わっていないように見えます。本講演では、海洋観測から明らかになってきた溶存有機物に関する最近の成果をご紹介したいと思います。
14:10~14:40 海洋物質循環を駆動する小さな生き物の働き
超先鋭研究開発部門 超先鋭研究開発プログラム 
副主任研究員
横川 太一

肉眼では見ることのできない小さな生き物(微生物)の生活について紹介します。微生物海洋学という研究分野では、人間が海洋に生息する微生物の存在を認識し、その生き方や海洋環境への影響を理解するという流れで知見が蓄積されてきました。本講演では、この歴史の流れに沿って、私たちが行ってきた「微生物を知る」ための観測方法とそこから得られた知見について紹介します。とくに微生物が主要素としてかかわる海洋の物質循環プロセスについて簡単に説明し、微生物海洋学研究の重要性やそこに取り組む面白さについてお話ししたいと思います。
14:40~14:50 休憩
14:50~15:20 観測から見る海洋、シミュレーションから見る海洋
地球環境部門 環境変動予測研究センター
特任研究員
渡辺 路生

現在、地球上でさまざまな海洋観測が行われていますが、地球は広大であり、全ての地球上の現象を観測することは不可能です。そこで、物理法則などに基づいて数値モデルを作り、様々な条件下で駆動し現象を再現することで現象の理解を進める、モデリング研究が行われています。将来にわたって起こる地球規模の温暖化などの気候変動も、最先端のモデルを用いたシミュレーションによって示されています。本講演では、モデリング研究の現在と、その課題、観測データがモデリング研究にどのように生かされているかお話しします。
15:20~15:35 講演内容フォローアップ
地球環境部門 海洋観測研究センター長
纐纈 慎也
15:35~16:25 パネルディスカッション
講演者
16:25~16:30 閉会挨拶
地球環境部門長 
増田 周平