海や地球環境に関する最新トピック

 コラムミクロの世界   〜電子顕微鏡で探る地球・生命〜


電子線マイクロアナライザー(EPMA)で見る

電子線マイクロアナライザー(EPMA)

電子線を試料に照射すると、試料から特性X線、二次電子や反射電子等が放出されます。特性X線は元素によって固有の波長を持っています。このX線を様々な検出器で検出することにより、試料の元素組成の濃度や元素の分布などを調べることができます。また特性X線の検出と同時に試料から発生する二次電子、反射電子を検出することにより、分析点を確認できます。JAMSTECでは主に鉱物の元素組成やその分布を調べるのに使われています。

生物系

ワカサギ耳石中のストロンチウム(Sr)分布像

これはEPMAによるワカサギ耳石中のストロンチウム(Sr)という元素の分布像です。魚類の頭部には石灰質で出来た耳石と呼ばれる石粒のような構造物が存在します。耳石は、周辺環境中の成分を取り込みながら中心から外側に向かって成長します。そのため、断面をみると樹木の年輪のような形になります。ストロンチウムという元素は河川では濃度が低く、海では高いことが知られています。ワカサギの耳石をみると、ストロンチウム濃度が高い(写真中のオレンジ〜赤色)部分と低い部分がリング状になっています。つまり、ワカサギは海で生育した時期と川で生育した時期があることを示します。このように耳石を詳しく調べることにより、ワカサギが川と海をどのように回遊しているのかを知ることができます。(資料提供:東京海洋大学教育学研究室 佐々木剛 准教授)



地質系

ヒマラヤざくろ石(1月の誕生石ガーネット)の元素マップ

これは、ヒマラヤ山脈の変成鉱物(地下深くで温度圧力条件が変化して、新しくできた鉱物)のざくろ石です。中心から外側に向かって、マンガン(Mn)が減り(赤→青)、鉄(Fe)が増えて(緑→赤)います。このような元素の変化と、周囲の鉱物との化学反応式から、ざくろ石が成長した際の温度圧力条件を推定することができます。ここでは、成長中に温度圧力が上昇したことが明らかとなり、現在ヒマラヤ山脈の地表にある岩石が、かつては地下深くへもぐり込んでいたことが分かりました。(試料提供:地球内部変動研究センター  山口はるか 技術研究副主任)

地震の化石シュードタキライトの反射電子像

地震のような高速の断層運動が起きると、岩石は破壊するだけでなく、摩擦熱で熔解することがあります。これは、世界で初めて発見された海溝型地震(スマトラ沖や十勝沖地震など。兵庫県南部地震などの内陸地震に比べマグニチュードが大きいのが特徴)の化石とされているものです。全体に分布する明色のもやもや部分が鉱物が熔けて結晶構造を失ってガラス質になった部分です。無数の小さな穴は、気泡と考えられます。石英Q(暗色)の縁辺部は複雑に入り組んでおり、熔けかけたことを示しています。 (試料提供:地球内部変動研究センター  氏家恒太郎 研究員)