2009年5月13日
Leg1首席研究者:海洋研究開発機構 村田 昌彦
今日は、海の中に溶け込んでいるCO2の観測について紹介します。ご存じのように、地球温暖化は私たちの身近な環境問題になっています。海は人がその活動によって排出してしまったCO2(これを人為起源CO2といいます)の30%から50%を吸収するといわれています。つまり、大気中に残るCO2を減らすことで、温暖化を遅らせる働きをしています。ほんとうはどの程度吸収しているのか、また、温暖化してしまった海でも同じように吸収してくれるのか等、実際の海に出て調べてみるしかありません。今回の航海の目的の一つは、人為起源CO2が実際にどれだけ海に蓄積しているかを調べることです。
海の中でCO2は、炭酸、炭酸水素イオン、炭酸イオンとして分かれて存在します。この3つを合わせて全炭酸と呼びます。海の中で、どれだけCO2が溶け込んでいるかを調べるときは、この全炭酸の濃度を測定します。写真は、海水サンプルを採取している様子です。採水する瓶は300ml 程の容積があるもので、写真では見えませんが内ふたが付いています。サンプルしている海水から大気中にCO2が逃げないように、チューブを瓶の底に入れ、静かに海水を満たしていきます。
瓶の中に海水を十分に満たします。内ふたをした後、裏返します。これは瓶の中に泡が入っていないかどうかをみるためで、泡が見つかれば採り直しとなります。
全炭酸濃度を測定するための装置です。一つのサンプル測定に15分ほどかかりますので、測定の効率を上げるため、同じ装置がもう一台あります。
装置に瓶を取り付けている様子です。
炭酸、炭酸水素イオン、炭酸イオンの3つの形で存在しているCO2ですが、一個一個を測定する方法は現在のところ確立していません。そのため、通常はリン酸等を加えて海水を酸性の溶液とします。pHでいうと2程度です。この酸性の状態ですと、3つの形で存在していたものが気体としてのCO2にかわります。この装置ではそのCO2を測定しています。写真は、CO2を窒素の泡で海水から追い出している様子です。