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海洋地球研究船「みらい」大航海

航海日誌

2009年2月18日

働くお父さん

海洋地球研究船「みらい」船長:赤嶺 正治

「みらい」は、総トン数8,687トンの世界最大級の海洋地球研究船です。船が大きいと荒天下でも観測が可能になりますし、広大な海洋の様々な海域において長期間にわたる観測が可能になります。今回のミッションは、正にこの「みらい」の特徴を最大限生かすことのできる航海です。

「みらい」は、母港のむつ市関根浜を平成21年1月15日に出港し、途中、八戸港、タヒチ島のパペーテ港に寄って、研究者や乗組員の交代、食糧、水の積み込み、燃料の補給などを行い、そして、船内時間の2月18日2時42分、古くから船乗り達に吼える海として恐れられている南緯46度50分、西経123度40分の海域に到着しました。
南極海から伝搬する大きなウネリと低気圧からの13m/sを超える強風が「みらい」を絶え間なく揺らします。しかし、ご心配なく、「みらい」には、世界に1台しかないという陸上の高層ビルの揺れ対策で開発されたハイブリッド型減揺装置が搭載されています。通常の揺れを約50%減らすことのできる優れものです。この減揺装置がフルに活動しています。

いよいよ採泥作業が「みらい」の広大な甲板で始まりました。採泥作業は、直径17mmのワイヤーケーブルの先にピストンコアラー(写真1)という長さ20mの採泥装置を取り付け、水深約4,000mの海底まで下ろし、このピストンコアラーを海底に突き刺して泥を採取します。ピストンコアラーを海中に投入してから、船上に回収するまで、約4時間を要します。この間、排水量で1万トンある「みらい」を、採泥地点の真上に位置させ、ピストンコアラーを研究者が希望する海底のピンポイントへ突き刺さるように操船します。「みらい」には、こうした精度の高い操船ができる装置も備付けられています。
平成21年2月18日13時52分、水深4,000mの神秘の ベールに包まれた海底の泥を採取することに成功しました。今回の「みらい」での吼える海という厳しい海域での採泥は、海洋観測史上に残る偉業となるでしょう。


写真1:採泥作業の様子

写真2は、甲板で採泥作業を指揮監督する甲板部幹部乗組員です。
黒の三本線が引かれているヘルメットを被り、腕に「指揮」と明記した腕章を着けているのが、観測作業全般を指揮する観測士官の井上治彦一等航海士(新潟県出身)です。日本郵船株式会社から出向して「みらい」の改造工事に携わり、就航後も「みらい」に勤務するベテラン航海士です。黒の二本線のヘルメットを被るのは、現場監督を務める小国久夫甲板長(岩手県出身)です。腕には「合図」の腕章を着けています。「みらい」就航時から勤務するベテラン甲板長で、前勤務の日本郵船株式会社では、特別待遇船技長として、若い船員の指導教育に携わっていました。船では厳しい鬼軍曹ですが、家庭では一男一女の優しいお父さんです。黒線一本のヘルメットを被るのは、小国甲板長を補佐する桑原洋輔甲板次長(東京都出身)です。小国甲板長が休暇で「みらい」を下船している間、甲板長の職を務めます。家庭では、看護師の愛妻と一男一女の可愛い子供に囲まれて、趣味のフットサルに興じるスポーツパパです。


写真2:甲板で採泥作業を指揮監督する甲板部幹部乗組員