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海洋地球研究船「みらい」大航海

SORAレポート

2009年6月18日

MR09-01 塩分測定

Leg2乗船研究者:塩分チーム

「海水は塩辛い」。このことをみなさんも体験されたことがあるでしょう。塩分は一般的にこの塩辛さを指しますが、海洋科学における「塩分」の定義は少し異なっています。海水には塩化物イオンやナトリウムイオンをはじめ約80種類の物質が溶存しており、この海水1kg中に含まれる溶存物質の重量を千分率 (パーミル; ‰) であらわすのが「絶対塩分」です。 海水では一般的に約35 ‰ (3.5%) となりますが、溶存物質の重量を直接しかも正確に計測することは困難です。代わって、溶存物質が増加すれば電気伝導度も高くなることを利用した値として、「実用塩分」が用いられます。本航海においてもこの実用塩分の定義に基づいて塩分測定を行っています。 塩分測定用の試料は、CTD採水システムによって任意の深度で採水された海水を、船上で塩分測定用のビンに採水して得ます。採水は、目的以外の水が混入しないよう慎重に、かつ蒸発などによる塩分の変化を防ぐため、素早く行います。

この試料海水を、塩分測定装置(AUTOSAL)を用いて基準となる物質 (標準海水) との電気伝導度比を測定することにより、塩分値を算出します。測定精度は、非常に高く、採水用のビンにわずかでも目的以外の水が入れば値が変化してしまうほどです。 また、電気伝導度に影響を与える要因として温度がありますが、「みらい」には塩分測定専用の分析室 (オートサル室) が設けられており、徹底した室温管理下で測定を実施しています。1日の測定時間は最大で約20時間、測定試料数は200本を超えることもあり、本航海中に8,500本以上の測定を行います。

こうした高精度測定の結果は、細かな塩分の変化をとらえ、海水の状態や特性を調べるデータとして用いられます。また、航海中長期にわたって使用し続けているCTDセンサーのずれの補正や、目的の深度で正しく採水が行われているかの監視にも使用されています。