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海洋地球研究船「みらい」大航海

SORAレポート

2009年4月2日【2】

Leg3のはじまり

海洋地球研究船「みらい」船長:赤嶺 正治

2009年4月2日、プンタアレナスを出港し、Leg3が開始しました。水先案内をしてくださるのは、船長の左側に位置するキャプテン・マイケル(長身のキャプテン、居室の出入口の鴨居に何度も頭をぶっつけるとのこと。本人の申告では、身長は2mをちょっと切るそうです。

日本食が大好きで、特に麺類が最高と話してくれました)と、キャプテン・トーマス(優しい日本のお父さんという感じです。昔、航海士として何度か日本を訪れたことがあるそうです。乗船時自ら用意したチョコレートやビスケットを船橋の当直者に振る舞います。コーヒーにも大さじ一杯の砂糖を入れる甘いもの大好きの水先案内人)です。

パタゴニアン水道で一番狭いイングリシュ・チャンネルを北から南へ抜けたのは、先日の2009年3月22日でした(3月22日のレポート参照)。そして今回4月3日、同チャンネルを南から北へ抜けました。この12日間で水道は大きく変わっていました。山々はすっかり冬景色です。

そして、この水道には、奥まったところに、多数の氷河があります。風向きが西から東に変わり、その東寄りの強い風によって氷河が切り取られ、流氷となって水道へ流れ出ていました。

本船に搭載する氷海レーダーでもその多数の流氷を捕らえることができました。レーダー画面上、円内の中心が「みらい」です。右側に点々と白く映っているのが流氷です。

イングリシュ・チャンネルは、原則夜間航行は禁止となっており、浅瀬を示す立標はありますが、灯火は設置されていません。今回、日没を過ぎていましたが、薄明かりで、かつ潮の流れが弱い時間帯であり、このチャンスを逃すと約一日チャンネル付近で錨泊しなければなりません。そして、天候の悪化も心配です。そこで、パイロットは、このチャンネルの航行管制を担当している近くの灯台(海軍が運用している)に連絡し、特別の許可をいただいて、通過を決行しました。

パイロットはこうした状態の通過を何度も経験しており、俺達に任せろと胸を叩きました。写真では暗くてよく見せませんが、船首には、いつでも錨を投入できるよう井上治彦一等航海士、桑原洋輔甲板長、船匠の相坂丈晴甲板手、大久保英之甲板員が立ち、船橋も見張りや操舵の要員を配置し、緊急に備えました。約30分間のスタンバイでしたが、緊張の連続でした。チャンネル通過を無事終え、パイロットから「スタンバイ解除」のオーダーが出た時には、胸を撫で下ろしたのは船長だけではなかったようです。