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海洋地球研究船「みらい」大航海

SORAレポート

2009年6月3日

MR09-01 海水中の温室効果ガスを調べる

Leg2乗船研究者:東京工業大学・酪農学園大学グループ

温室効果ガスとしてCO2(二酸化炭素)はよく知られていますが、CH4やN2O(一酸化二窒素)も、濃度は少ないものの18世紀の産業革命以降増加していて、CO2に次いで重要な温室効果気体です。CH4やN2Oは天然には主に微生物の働きで作られますが、家畜、化学肥料などの人間活動が微生物の働きを促進したり、化石燃料の燃焼でも発生したりするので、なぜ濃度が増加しているのか、まだよくわかっていません。
海洋にも微生物はいるので、CH4やN2Oが作られており、発生源の一つであることはわかっていますが、年間どれくらいの量が大気中へ放出されているのか、海のどんな場所でどんな物質から作られているのかを観測により詳しく調べる必要があります。
この航海では、南太平洋の東の端から西の端までの約30箇所で、表面から海底までの海水を採取して実験室に持ち帰り、CH4やN2Oの濃度と安定同位体比を調べます。安定同位体比とは13Cと12C、15Nと14Nなどのように質量数がわずかに異なる原子の存在比のことで、微生物がCH4やN2Oを作るときの原料物質が何であるか、どんな反応プロセスでCH4やN2Oを作っているか、など濃度だけではわからない質的な情報を与えてくれます。

水を採取するガラスびんです。30mLから600mLまでいろいろな大きさのびんを使いますが、これは測りたいものの存在度がさまざまであるためです。水分子100億個につきおよそ2個のCH4やN2O分子が溶けていますが13C、15Nは0.02個、2H(重水素)は0.01個の割合しかありません。

採水の準備をしているところです。黄色いかごの中に、塩分、溶存酸素など基本分析用のびんに加えてCH4やN2O分析用のびんが入っています。

バケツで汲み上げた表面の海水から採水しているところです。

大気中のCH4やN2Oも調べることで、海から大気への放出量を推定できます。大気を採取するための、真空引きしたステンレスやガラスの容器です。