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海洋地球研究船「みらい」大航海

SORAレポート

2009年6月7日

MR09-01 海水中のフロンを測定する

Leg2乗船研究者:CFCチーム

今日は海水に溶け込んでいるクロロフルオロカーボン類(フロン類)について紹介します。 フロン類は、1900年代に入ってから製造された人工化合物で、産業面や生活面など多方面において利用されてきました。その利便性から、「夢の物質」とさえ形容されていたこともあります。しかし、成層圏オゾン層を破壊し、地球環境に重大な影響を及ぼす原因になることが分かり、現在では、全世界的にフロン類の製造が禁止されるなど国際的な対策が取られています。 大気に放出されたフロン類は、大気と海洋表面水との気体交換で海水に溶け込みます。
フロン類の多くは、生物化学的に安定(つまり、生物代謝や化学反応による消滅過程が存在しない)で、海水の動きによって広がっていくので、海洋循環を追うトレーサとして利用することができます。染料を垂らして水槽の中の水の動きを可視化するのに似ています。 この航海では、海水中のフロン類を測定し、15年前の観測結果と比較することで、海洋がどのように循環してきたのかを調べようとしています。
それではフロン類の分析について紹介します。海水中に溶けているフロン類の濃度は、非常に微量で、ppq(1千兆分の1)のオーダーになります。その為、採水、分析の随所に精密にフロン類を測定する為の工夫がなされています。

写真は、フロン類の採水瓶です。ガラス瓶に金属製の特殊な部品をを取り付け、2つのコックで大気と瓶の中を遮断しています。海水に比べて大気の方が圧倒的にフロン類の濃度が高いため、大気からの汚染を防ぐ必要があるからです。

採水瓶の中には採水前に予め、高純度窒素ガスを封入しています。


分析システムの写真です。脱気装置(拡大写真)で、採取した海水を窒素ガスでバブリングして溶け込んでいるフロン類をガス化して抽出します。濃縮装置で、上記で追い出されたフロン類を捕まえます。それをガスクロマトグラフに送り、目的のフロン成分を分離して検出します。最後に検出したデータをコンピュータで解析します。 脱気装置と濃縮装置は、私たちが開発した手作りの装置です。分析システムは自動制御になっていて、装置に試料を導入すれば、分析データが得られるようになっています。極微量の成分を分析するため、メンテナンスをこまめに実施して、連続観測に対応しています。