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海洋地球研究船「みらい」大航海

SORAレポート

2009年6月12日

MR09-01 二酸化炭素の動態を調べる(その2)

Leg2乗船研究者:アルカリ度/pHチーム

5月13日のレポートでは全炭酸について紹介しました。全炭酸は海水の二酸化炭素の動態を調べる4つの観測項目(全炭酸、pH、アルカリ度、二酸化炭素分圧)のひとつです。今回はpHとアルカリ度について紹介いたします。
海が人為起源の二酸化炭素を吸収することで、徐々に海が酸性化することがわかっています。そこで、近年、酸性化は海の生態系などにどのような影響を及ぼすか、といった研究が盛んに行われています。そんな酸性化の指標になるのがpHです。過去に同じ海域で調査したpH値と、現在のpH値を比べることで、酸性化の進行具合を知ることが出来ます。
pH測定では、採取した海水試料に指示薬を加えます。指示薬を加えた後の色は海水のpHに依存します。その色を測定し、pHを算出しています。空気に触れるとpHはすぐに変化しますので、採水時や測定時は空気になるべく触れないように細心の注意を払っています。また、測定し直すことが出来ないので、測定は一発勝負!常に良い状態で試料を測定できるよう、装置を万全の状態にしています。


装置のメンテナンスをしている様子と試料を装置にセットしている様子です。
さて、海水は酸性でしょうか?アルカリ性でしょうか?
正解はアルカリ性です。このアルカリ性の度合いを定量的に表した値をアルカリ度といいます。アルカリ度は、酸とアルカリの中和反応を利用し求めています。簡単に説明すると、中和までに使用した塩酸の量をアルカリ度としています。1試料の測定時間は約13分。今航海では約5,000試料を測定しますので、観測が始まると装置は休むことなく常に稼動しています。

アルカリ度を測定している様子です。pHとアルカリ度、さらに全炭酸と二酸化炭素分圧のうち2つの値がわかれば、直接測定することの出来ない溶存物質量(溶存二酸化炭素、炭酸水素イオン、炭酸イオン)を計算で求めることができます。 海水の二酸化炭素の動態に注目したこれらの測定は地球温暖化の予測に不可欠です。