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海洋地球研究船「みらい」大航海

SORAレポート

2009年6月11日

MR09-01 窒素固定に関する研究

Leg2乗船研究者:東大院農グループ

東京大学大学院農学生命科学研究科のグループは、植物プランクトンの生態、とくに窒素固定に関する研究をしています。植物プランクトンは、肉眼では見えないほど小さいですが、おびただしい数が海洋表層に分布し、海洋の主要な一次生産者として、そこでの物質循環の駆動者としての役割を果たしています。現在、「みらい」で観測している亜熱帯海域表層では窒素やリンなどの栄養塩類濃度が低く、生物活動の律速要因となっています。
しかし、このような貧栄養海域には窒素ガスを固定して利用する、すなわち窒素固定能をもつ生物が存在し、その多くは植物プランクトンとして光合成も行いますが、最近、光合成を行わない従属栄養性の窒素固定者も存在する可能性が分かってきました。写真に示したのは窒素固定能をもつ植物プランクトンですが、最近の研究から、多様な窒素固定者が亜熱帯海域に広く分布していることが明らかになってきました。


本航海にて東大院農グループが撮影

窒素が枯渇した亜熱帯海域では、窒素固定者は他の植物プランクトンに比べて有利になり、リン酸塩を使って増殖します。このため、海域のリン酸塩が著しく低い濃度に低下するなど、表層の栄養塩環境は窒素固定の有無で大きな影響を受けます。
窒素固定活性の測定にはアセチレン還元法と重窒素法があり、我々は両者を用いています。前者は船内で迅速に結果が得られるので、現場での観測を柔軟に進めることができます。後者は、精度の高い分析を可能にします。
重窒素法では、表面からバケツで汲上げた海水をPCボトルに採り、これに重窒素ガスを注入します。その後、甲板上に設置した水槽内で培養し、24時間後に、懸濁粒子をガラスフィルター上に濾過捕集します。これを凍結保存して持ち帰り、質量分析器を用いて、培養前との重窒素を含む粒子量の差を測定し、窒素固定量を求めます。