更新日:2021/08/02

観測

日本南方黒潮域

2021年6月14日-6月23日に実施
新青丸KS-21-11航海 研究課題名「洋上水蒸気量の微細構造推定手法の開発による黒潮から大気への水蒸気供給の実態解明」

新青丸KS-21-11次航海が2021年6月14日から6月23日まで、紀伊半島沖から四国沖にて行われました。この航海の目的の一つは、海上の水蒸気がどのような3次元構造を持ち、 その分布に黒潮がどの程度影響を与えているのかを観測的に把握することです。これまでの船舶からのラジオゾンデ観測は、1時間に1回程度が限界で、詳細な水蒸気分布を 捉えることはできませんでした。本航海では、直上の水蒸気量を1分毎、高さ500m毎に推定できる新型マイクロ波放射計を用いて、海上の微細な水蒸気分布を把握し、 海面水温の分布がどこまで大気の水蒸気分布に影響しているのかを調査しました。また、同時に全天雲カメラやGNSS受信機による雲分布・鉛直積算水蒸気量観測、ラジオゾンデ による高層気象観測、CTD・XCTDによる海洋鉛直観測、船首楼に設置した超音波風速計による海面乱流フラックス観測を実施し、黒潮周辺の大気海洋構造の実態把握を試みました。

航海の前半では、潮岬沖で南に蛇行している黒潮を北東から南西に、後半では四国沿岸を流れる黒潮を南東から北西に横断しながら、3時間毎のラジオゾンデによる高層気象観測、 CTD、XCTDでの高密度海洋観測を行い、黒潮とその直上大気の微細構造を観測しました。また、航海終盤にはもう一つの目的である、地震・津波観測監視システムDONETによる 海底圧力観測と船舶観測との比較のため、潮岬沖のDONET観測点直上で1日半の定点観測を行いました。

本航海は、6/16の低気圧通過に伴い、1日観測が中止になり、予定していた観測点の変更を余儀なくされましたが、それ以降は天候、海況にも恵まれ、順調に観測が実施され ました。本航海の2~3週間前に実施されたKS-21-9次航海の観測結果とも比較しながら、黒潮に伴う大気海洋相互作用の実態を明らかにしていきます。 

KS-21-11次航海航路図。■がXCTD測点、●がCTD測点、+がラジオゾンデ測点。カラーは、ひまわり8号から推定された6/14から6/23の平均海面水温(℃)。

コンパスデッキ床面に設置されたマイクロ波放射計と全天雲カメラ

コンパスデッキ側面に設置されたGNSSアンテナ

夕暮れ時のCTD観測

夜間のラジオゾンデ観測準備の様子

放球装置の中でラジオゾンデ用の気球を膨らませる様子

延べ35回のゾンデ観測を完遂したゾンデ観測班の学生たち

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吉田 聡(京都大学 防災研究所)