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海洋観測研究センター

大気海洋セミナー

第284回横須賀大気海洋セミナー

日時
3月19日(火) 14:00~15:00
場所
Google Meet
発表者
井上 龍一郎(GOORC)
タイトル
乱流計つきフロートの実証実験の結果
要旨
本発表では、2022年度と2023年度に行った乱流計(シアー・高速水温計)内蔵型フロートの外洋域での実証実験の結果を報告し、今後の方針について議論する。
フロート観測後に回収したフロートデータから、高速水温計から計算した乱流強度はフロート投入時に船上から行われた乱流観測結果と良く一致すること、シアー計はフロート揺動の影響を受け乱流強度を大きく見積もることがわかった。また、フロート観測中に内部で処理・平均・送信された乱流データは、平均データ点数が少ないと乱流強度を大きく見積もることに注意が必要なことがわかった。以上を踏まえ、シアー計観測のためのフロート改造と高速水温計を使った広域・長期観測を並行して進めていくことを今後の方針として考えている。

第283回横須賀大気海洋セミナー

日時
3月12日(火) 14:00~15:00
場所
Google Meet
発表者
森 修一(CCOAR)
タイトル
航空管制通信利用による稠密気象データ取得の試み
要旨
予算も人手も掛かるラジオゾンデ観測の部分的代替手段として、商用航空機から「放送」されている航空管制用信号(ADS-B)を独自受信し、高時間分解能の高層気象データを取得する手法を開発している。多数の離着陸機をもつ羽田空港に近いJAM本館屋上や、現業ラジオゾンデ観測点が併設されているインドネシア(ジャカルタ、デンパサール、バリクパパン)、大型VHF大気レーダーのある京大MU観測所等に受信機を展開し、取得データの精度評価とアルゴリズム改良、試験的なデータ公開を行なっており、これらの進捗状況について報告する。

第282回横須賀大気海洋セミナー

日時
3月5日(火) 14:00~15:00
場所
Google Meet
発表者
勝俣 昌己(CCOAR)
タイトル
「みらい」での雨滴粒径分布観測研究の進捗報告
要旨
雨滴粒径分布すなわち「大きさ別の雨滴数の分布」は降水メカニズムに関連しており、またレーダーを用いた淡水フラックス推定にも関連する要素である。これまで「みらい」船上に「雨滴粒径分布計(ディスドロメータ)」を設置して観測を行ってきた。また「みらい」気象レーダー(いわゆる「ドップラーレーダー」)でも雨滴粒径分布に関する情報が得られる。今回は両機器の熱帯での観測データについて、処理方法と品質に関する検討結果の現状、得られたデータの傾向、そして今後の方向性について報告する。

第281回横須賀大気海洋セミナー

日時
2月27日(火) 14:00~15:00
場所
海洋研究棟304セミナー室+Google Meet(ハイブリッド形式)
発表者
増田 周平(RIGC)
タイトル
11年周期太陽活動の全球海面水位変動への影響の要因
Origin of the Solar-Cycle Imprint on Global Sea Level Change
要旨
太陽活動の11年周期に同期する全球海面水位変動の要因についてはこれまで諸説あったものの十分なデータ長を確保できず、よくわかっていなかった。本研究では新たに長期の陸水変動に関連するインデックスなどを用い、この同期が水循環の変動に起因する可能性が高いこと、また、その感度がENSOの位相に依存することを明らかにし、そのメカニズムを探った。

第280回横須賀大気海洋セミナー

Date and time
February 20 (Tue), 14:00-15:00
Place
Seminar Room 3F, Exhibition Hall (海洋科学技術館), Yokosuka HQ+Google meet
Speaker
Lyndon M. P. Olaguera (Ateneo de Manila University)
Title
Quantifying the Influence of the Madden-Julian Oscillation on Rainfall Extremes during the Northeast Monsoon Season of the Philippines
Abstract
This study investigates the impact of the Madden-Julian Oscillation (MJO) on the extreme rainfall events across 11 eastern coastal stations during the northeast monsoon season (November to March) over the Philippines from 1979 to 2019. The contribution of synoptic systems to these extreme rainfall events such as tropical cyclones (TCs), low-pressure systems (LPS), cold surges (CS), and other disturbances as they coincide with a strong and active MJO (amplitude >1 between Phases 4 to 6) were quantified. The results show that the probability of extreme rainfall occurrence increases first to as much as 20% in the southernmost stations in Phase 4 before it increases to more than 60% until Phase 6 of MJO in the central-eastern stations.
The extreme rainfall events were classified into: MJO-only, TC-MJO, LPS-MJO, CS-MJO, TC-nonMJ, LPS-nonMJO, CS-nonMJO, and others. The percentage contribution of MJO only, TC-MJO, LPS-MJO, and CS-MJO to the total extreme rainfall events ranges from 9-16%, 0-3%, 2-4%, 1-9%, respectively. The percentage contribution of TC-nonMJO, LPS-nonMJO, CS-nonMJO, and other disturbances ranges from 4-26%,4-13%, 3-18%, 38-49%, respectively. The largest percentage comes from other disturbances, which may include cold surge shearlines, mesoscale convective systems, and localized convective activities, among others.
Moreover, the relationship between MJO and flooding events in the Philippines was also examined. About 28 flood events or 266 flooding days were identified during the analysis period, wherein 50% of these events coincidentally occurred during strong and active phases of MJO. This study provides additional insights to existing literature on the impact of MJO on the climate of the Philippines by quantifying the contribution of TC and non-TC disturbances during active and strong MJO as well as the relationship between flooding events and MJO.
Keywords
MJO, Extreme Rainfall Events, Low Pressure Systems, Tropical Cyclones, Floods

第279回横須賀大気海洋セミナー

日時
2月13日(火) 14:00~15:00
場所
海洋研究棟304セミナー室+Google Meet(ハイブリッド形式)
発表者
熊本 雄一郎(GOORC)
タイトル
フロン類を用いた通過時間分布(TTD)法による海水循環時間の見積り
要旨
クロロフルオロカーボン類(CFCs)に代表されるハロカーボン、六フッ化硫黄(SF6)は本来大気中には存在せず、20世紀になって工業的に生産されたものである。過去の大気中濃度の履歴から、それらは過去数十年程度の時間スケールの海水循環を議論するためのトレーサとして利用されてきた。しかしながら、求められる「トレーサ年令(見かけの年令)」には大きな不確かさが含まれており、それを改善するために、通過時間分布(Transit Time Distribution、TTD)法が用いられるようになっている。本発表ではフロン類を用いたTTD法のあらましを紹介するとともに、しばしば混乱が見られる「入替時間」、「平均年令」、「通過時間」の違いについても説明する。

第278回横須賀大気海洋セミナー

日時
2月6日(火) 14:00~15:00
場所
海洋科学技術館3Fセミナー室+Google Meet(ハイブリッド形式)
発表者
松本 淳(CCOAR)
タイトル
The teleconnection of the two types of ENSO and Indian Ocean Dipole on Southeast Asian autumn rainfall anomalies (With Dzung Nguyen-Le and Thanh Ngo-Duc)
要旨
The teleconnections of the two types of the El Nino-Southern Oscillation (ENSO) and the Indian Ocean Dipole (IOD) on autumn rainfall over Southeast Asia and its 20 subregions are investigated during 1979-2019. Under El Nino, autumn rainfall reduces over the West Philippines and most of the Maritime Continent, while Indochina experiences alternating dry and wet conditions. Under El Nino Modoki, more rainfall reduction is evident in Indochina, East Philippines, Malay Peninsula, and North Sumatra. Conversely, El Nino Modoki causes less dry conditions than El Nino in southern Southeast Asia. La Nina and La Nina Modoki tend to increase autumn rainfall, except in Sumatra and some specific areas in Indochina. However, La Nina Modoki causes notably more rainfall than La Nina in northern Southeast Asia, including Indochina (except Myanmar), the Malay Peninsula, and Philippines. Although insignificant, La Nina Modoki also reproduces more rainfall in eastern Indonesia, whereas displaying less rain in the central and western Maritime Continent. These distinctions of ENSO Modoki compared to ENSO are driven by different sea surface temperature anomalies patterns, leading to a more northward Walker circulation and the presence/strength of an anomalous Philippine Sea cyclone. Positive IOD (negative IOD) also generally results in drier (wetter) autumn, with the rainfall anomaly patterns of positive IOD/negative IOD exhibiting similarities to El Nino/La Nina. However, compared to both types of ENSO, IOD impacts are weaker over Pacific-facing subregions while only stronger in specific equatorial Indian Ocean-facing subregions. This stronger impact comes from reduced (intensified) moisture transport from the equatorial Indian Ocean to southwestern Southeast Asia under positive IOD (negative IOD).

第277回横須賀大気海洋セミナー

日時
1月30日(火) 14:00~15:00
場所
Google Meet
発表者
城岡 竜一(CCOAR)
タイトル
パラオ域集中観測で台風をとらえる
要旨
2004年から観測を行ってきたパラオ共和国アイメリーク杉ノ原観測サイトを2024年3月で閉鎖することとした。今後は、パラオ気象台との協力による共同観測に重点を移す。今回の発表では、これまで、アイメリーク杉ノ原観測サイトを中心にパラオ域で実施した特別観測を振り返り、台風をとらえた事例に焦点を当てて紹介する。 西部熱帯太平洋での大気海洋観測において台風は重要なターゲットであり、パラオは、その発生過程をとらえるのに適した場所に位置している。また、様々な測器を活用した多角的な観測は、台風形成のメカニズムの解明に新たな視点を加えると考える。

第276回横須賀大気海洋セミナー

日時
1月23日(火) 14:00~15:00
場所
海洋研究棟304セミナー室+Google Meet(ハイブリッド形式)
発表者
杉浦 望実(GOORC)
タイトル
観測プロファイルを特徴づける積分量に留意した海洋データ同化
要旨
当グループが実施している全球長期海洋状態推定(ESTOC)においては、気候学的スケールでの熱・物質のバランスの再現が重視される。このため、データ同化手法としては、年スケールの長い同化ウィンドウを用いた強拘束4次元変分法を採用してきた。しかしながら、空間各点での観測値を個別に同化する従来手法では、モデルの表現誤差が顕著な状況下において、マクロな熱・物質のバランスが適切に推定できない可能性がある。そこで、従来の観測演算子を根本的に見直して、観測点単位の同化でなく、観測プロファイル単位の同化に切り替えようと試みている。このことは、反復積分(または、シグネチャ)という量で観測およびモデルの鉛直プロファイルを表現することで実現すると考えており、そのような仕組みをデータ同化システムに実装済である。
本発表では、観測プロファイルを同化単位とするプロトタイプ同化実験の結果を報告する。同化ウィンドウは10年間で、Argoプロファイルのみを同化しており、対照実験として従来の観測点単位の同化も実施した。データ同化手法及び結果の概要を述べるとともに、課題についても議論する。

第275回横須賀大気海洋セミナー

日時
12月26日(火) 14:00~15:00
場所
海洋研究棟304セミナー室+Google Meet (ハイブリッド形式)
発表者
重光 雅仁(GOORC)
タイトル
長期温暖化に伴い溶存有機物が海洋中の酸素に及ぼす影響
要旨
地球温暖化が進むと、「北大西洋子午面循環の減速」や「南極底層水形成の変化」が今世紀中にも生じる可能性があり、その結果、海洋内部の水温も劇的に変わると予想される。これらはティッピングエレメントと呼ばれ、ある閾値(ティッピングポイント)を超えると「元に戻らない変化になる可能性がある地球の気候システムを構成する要素」に相当する。したがって、今世紀中に二酸化炭素の排出がピークアウトしたとしても、ティッピングエレメントの影響はその後も数千年程度続く可能性がある。
この文脈において注視すべき物質が海洋には存在する。それは溶存有機物である。海洋中の溶存有機物を炭素量に換算すると、その炭素量は大気中CO2の総量に匹敵する。したがって、上記ティッピングエレメントの影響で深層まで含む海水温が変化すると、海洋微生物生態系が影響を受け、溶存有機物の生成・消費速度が変わり、その結果、海洋中の物質循環が長期的に影響を受け続けるかもしれない。しかし、長期温暖化に伴う「溶存有機物の海洋物質循環への影響」を調べた研究は存在しない。
そこで本研究では、長期温暖化に伴って溶存有機物が溶存酸素に与える影響を明らかにしたので、それを報告する。

第274回横須賀大気海洋セミナー

日時
12月19日(火) 14:00~15:00
場所
海洋研究棟304セミナー室+Google Meet (ハイブリッド形式)
発表者
勝又 勝郎(東京大学、GOORC)
タイトル
東部エンダビー深海平原における深層循環 ― MR19-04 の結果報告 ―
要旨
MR19-04 航海は南大洋インド洋セクタの西部における南緯 30 度から 66 度までの GO-SHIP の I07S線の初の観測であった。観測線は温度・塩分・溶存酸素の特徴的な前線を通過した。とくに塩分のそれは強烈で、これは表層の塩分コントラストを反映する。また環海流が南西インド洋海嶺を乗り越える際に発生する渦により、1000 ~ 3000 mで活発な渦活動が見られた。とくに従来からあまり記述されていなかったウェデル海盆の東端にあたる東部エンダビー深海平原における深層循環をCFC を用いて考察した。主な循環は移流が弱く渦輸送で説明される北向きの輸送であることが分かった。これをラプラス型の渦拡散で表すと係数が1000 ~ 10000 m2/s 程度の強めの渦拡散であった。

第273回横須賀大気海洋セミナー

日時
12月12日(火) 14:00~15:00
場所
Google Meet
発表者
木下 武也(CCOAR)
タイトル
大型ゴム気球を用いた高高度ラジオゾンデ観測で見られた高度30-36kmにおける温度減少について
要旨
成層圏上層の観測データは、ロケットゾンデ観測の定常観測が1990年代に終了して以降、それよりも下層に比べ少ない状況が続いている。そのため現在研究で使われている主要な再解析モデルデータ間で、この高度域の風速・温度構造が大きく異なる問題がある。そこで、私たちは成層圏上層の直接観測データを得るべく、大型ゴム気球を用いた高高度ラジオゾンデ観測を実施してきた。本発表では、現在実施している沖縄での高高度ラジオゾンデ観測について紹介する。続いて観測を行う中、2022年9月28日の高度30-36kmにおいて顕著な温度減少が見られた。これは、2023年11月に実施した高高度ラジオゾンデ観測の結果を含め、この日以外には見られない現象であった。そこで衛星観測データ、再解析データの温度データを調べたところ、同じ高度域において温度減少が見られたため、これらを用いて温度減少を作る要因を調べた。その結果、西向きに伝播する総監規模スケールの波と上向きに伝播する慣性重力波による可能性が示唆された。

第272回横須賀大気海洋セミナー

日時
11月28日(火) 14:00~15:00
場所
Google Meet
発表者
服部 美紀(GOORC)
タイトル
ボルネオ渦の発達とコールドサージおよびMJOの位相との関係
要旨
冬季アジアモンスーン期に発生するボルネオ渦は、大陸から南シナ海へ吹き出すコールドサージに伴って発達することが知られている。しかしながら、熱帯赤道域の対流活動に大きく影響を与えるマッデン・ジュリアン振動(MJO)との関係性についてはほとんど 議論されていない。本研究ではボルネオ渦の発達とMJOの位相との関係について明らかにするため、熱帯域へ適用した寒冷渦指標を用いてボルネオ渦を抽出し、渦度収支解析を行なった。特にボルネオ渦の強度が強いPahse5と8に注目し、コールドサージの有無とボルネオ渦の発生位置で分類して渦度収支解析を行なった。ボルネオ渦の発達には主にコールドサージに伴う渦度の移流とストレッチングの増加が寄与していることがわかった。Phase5と8においてはMJOやコールドサージに伴う強い収束域が存在し、北東からの渦度移流がある中で対流によりストレッチングが増加し、ボルネオ渦の発達につながったことが示唆された。

第271回横須賀大気海洋セミナー

日時
11月21日(火) 14:00~15:00
場所
Google Meet
発表者
細田 滋毅(GOORC)
タイトル
近年の観測結果に基づく貯熱量変動
要旨
全球的な気候変動にとって、海洋貯熱量は地球温暖化による熱がどの程度吸収されているかを知りかつ気候変動の重要な指標である。海洋貯熱量の変化をより深く理解するためには、時間的なトレンドだけでなく海域毎の時空間変化を把握し、その要因を探る必要があると考える。2000年代に観測された地上気温の昇温の停滞(Hiatus)現象と、その後の昇温の現象は、それらを探るうえで1つの良い事例になるはずである。
そこで、Argoなどによって充実してきた観測データを用いて時空間的な変動特性や貯熱量の分布について、海面フラックスも活用しつつ調べた結果を紹介する。また、OceanOBS’19にて提案され、2020年から開始、UN Decade projectにも採択されているOneArgoについての現場レベルでの最近の動向も少し情報共有する。

第270回横須賀大気海洋セミナー

日時
11月14日(火) 14:00~15:00
場所
Google Meet
発表者
清木 亜矢子(CCOAR)
タイトル
Diurnal SST warming and the boreal summer intraseasonal oscillation in the Philippine Sea: contrasts between early and late summer
要旨
The relationship between diurnal fluctuations of sea surface temperature (SST) in the Philippine Sea and the boreal summer intraseasonal oscillation (BSISO) and its difference between early and late summer are investigated using four-year (2017–2020) data of a moored buoy deployed at 137°E, 13°N. A strong diurnal cycle of SST is observed frequently during convectively suppressed phases of the BSISO, simultaneous with a weakening of surface winds and enhanced insolation. In addition, abrupt SST warming along with the strong diurnal cycle occurred in the middle of May in 2018 and 2019, in conjunction with the first BSISO of the year. Interestingly, the convectively suppressed phases of second BSISO showed small SST warming albeit the strong diurnal cycle, which can be attributed to a deepening of the warm isothermal layer. In the remaining two years, 2017 and 2020, SST increased gradually with small diurnal SST amplitude, which is presumably attributed to continuous surface winds with moderate strengths mixing the upper ocean. Moreover, the first BSISO was observed in late summer. These results suggest that the abrupt SST warming associated with the strong diurnal cycle is linked to the seasonal onset of the BSISO.

第269回横須賀大気海洋セミナー

日時
11月7日(火) 14:00~15:00
場所
Google Meet
発表者
堀井 孝憲(CCOAR)
タイトル
Low salinity water and mixed layer variability in the regions of Indonesian Throughflow (ITF) exits of the eastern Indian Ocean
要旨
The Indonesian Throughflow (ITF) flows from the Pacific Ocean through the Indonesian Archipelago and into the eastern Indian Ocean. It is an important element of the global ocean circulation. Since the 2000s, there has been a dramatic progress in quantifying ocean circulation related to the ITF. On the other hand, possible effects of the ITF water masses entering the eastern Indian Ocean are not clear in terms of climatological and oceanographic viewpoints. This study aims to investigate the possible impact of low salinity water from the ITF on the hydrographic condition of the eastern Indian Ocean. Based on observations from Argo floats around Sunda and Lombok Straits in the eastern Indian Ocean, we found a distribution of low salinity waters in the upper layer and shallow mixed layers that would be related to the ITF. In general, the mixed layer depth in the southeast Indian Ocean is shallow during the northwest monsoon (December-March) and deep during the southeast monsoon (June-October). In the regions around ITF exits, however, water masses with shallow mixed layer were observed from August to October. Possible changes in the air-sea heat exchange processes related to these water mass and mixed layer changes will be discussed.

第268回横須賀大気海洋セミナー

日時
10月31日(火) 14:00~15:00
場所
Google Meet
発表者
趙 寧(CCOAR)
タイトル
Regional uncertainties of SST products in marine heatwaves over the Asia and Indo-Pacific
要旨
Prolonged extremely warm ocean temperatures have great impacts on both natural ecosystems and human communities. These phenomena (i.e., the marine heatwaves, MHWs) could be easily monitored globally by satellite-based sea surface temperatures (SSTs); however, the choice of datasets may lead to potential uncertainty in their assessments. Here, three commonly used SST products were applied to illustrate the uncertainty in MHW estimations over Asia and the Indo-Pacific. Distinct differences were found in MHWs extracted from three datasets, leading to a large spread in their occurrence, durations, and long-term trends, which may be ignored in a global map but are significant from a regional perspective. While the mean SSTs and their variances correlated well with the domain-averaged metrics, none of them could explain the uncertainties, which had no clear dependence on locations or ocean states. This is an ongoing study, so only brief results will be shown during the seminar.

第267回横須賀大気海洋セミナー

日時
10月17日(火) 14:00~15:00
場所
Google Meet
発表者
名倉 元樹(CCOAR)
タイトル
赤道インド洋中層の混合ロスビー重力波
要旨
Mixed Rossby gravity (MRG) waves are a prominent mode of intraseasonal variability in the tropical oceans. This study examines these waves at mid-depths of the equatorial eastern Indian Ocean, where they have not been fully examined so far. We use multi-year velocity time series data at nominal depths of 500, 1000, 2000, and 4000 m from moorings at 77°, 83°, and 93°E along the equator in combination with an ocean general circulation model driven by 3-hourly averaged surface meteorological variables obtained from an atmospheric reanalysis. The spectrum of meridional velocity on the equator showed elevated power over a wide range of periods from about 10 days to two months with the spectral peak at a period of about 30 days. The model was able to simulate the observed spectral characteristics which further model diagnostics determined were associated with variations consistent with theoretical MRG waves in a resting ocean. A model sensitivity experiment in which surface winds were low-passed so as to not include intraseasonal variability resulted in the elimination of energy of meridional velocity centered at biweekly periods. Conversely, energy at periods of 30 days and longer was essentially unchanged compared to the control run. Using Wentzel–Kramers–Brillouin (WKB) ray tracing for MRG waves in the sensitivity experiments shows that energy at mid depths in the eastern Indian Ocean originates from near the surface in the western Indian Ocean, where the mean currents are dynamically unstable. These results suggest that mixed Rossby gravity wave energy at mid-depths of the eastern Indian Ocean is generated by a mixture of surface wind forcing and dynamical instability.

第266回横須賀大気海洋セミナー

日時
10月10日(火) 14:00~15:00
場所
Google Meet
発表者
荻野 慎也(CCOAR)
タイトル
東南アジア域における春季コールドサージに伴うオゾン変動
要旨
東南アジアは大気汚染物質の重要な排出源である。長年のベトナム・ハノイにおける上空オゾン観測から見出した春季対流圏下部におけるオゾン増大は、東南アジア大気汚染が顕著に表れたものである。このオゾン増大の主因はハノイ西方のインドシナ半島で起こるバイオマス燃焼である。しかし、よりミクロに見ると、このオゾン増大は間欠的に起こり、数日の時間スケールを持ったコールドサージと関係している。コールドサージに伴うオゾンの時空間変動を化学輸送モデル実験に基づき記述し、ハノイにおけるオゾン増大のメカニズムを調べた結果を紹介する。

第265回横須賀大気海洋セミナー

日時
10月3日(火) 14:00~15:00
場所
Google Meet
発表者
横井 覚(CCOAR)
タイトル
インド洋-太平洋暖水域における大気境界層熱・水収支過程の観測的研究
要旨
熱帯域における積雲対流活動は、熱帯低気圧・台風や季節内変動などの大規模大気擾乱によって活発化する一方で、擾乱の特性や強度の変化に本質的な役割を果たす。この積雲対流活動と大規模場の相互作用の理解の深化を最終目標として、積雲対流活動の群が大気境界層(混合層)の熱と水蒸気量(すなわち、湿潤静的エネルギー(MSE))をどの程度変化させるのか、船舶定点観測データを用いてMSE変化量を推定する試みを行っている。これまで、大気境界層内の水平移流が無視できると仮定して推定手法を開発してきたが、大規模場の条件によってはこの仮定の妥当性に疑問が残っていた。そこで、「みらい」MR20-E01航海にて西部熱帯太平洋における定点観測で実施した、「みらい」・Wave Glider・係留ブイによる一般海上気象の空間分布の連続測定で得られたデータを用いて熱と水蒸気量の水平移流を見積もり、水平移流無視の仮定がMSE変化量の推定値にどの程度の影響を与えるのかを評価した。

第264回横須賀大気海洋セミナー

日時
9月26日 (火) 14:00~15:00
場所
Google Meet
発表者
茂木 耕作(CCOAR)
タイトル
2020年7月九州豪雨の論文出版の報告と2021年インドネシア・コールドサージ観測の解析
要旨
(話題1)
2020年7月九州豪雨が長期化した原因において大気海洋相互作用過程を論じた論文が9/5にScientific Reports誌に掲載されたので概要と審査過程における議論の経緯を簡単に報告する。
https://doi.org/10.1038/s41598-023-41730-0

(話題2)
YMC-CSO2021期間中に観測された赤道越え北風サージの鉛直構造 https://docs.google.com/document/d/1nfmZ95wdQzZVRadV0WRFoc HDgK6T7GwsggUl9Ox2aAM/edit?usp=sharing
YMC-CSO2021 (Years of the Maritime Continent-Cold Surge Observation in 2021)の期間中(2021年1月8日〜3月8日)では、6事例の赤道越え北風サージ(Cross Equatorial Northerly Surge: CENS)が観測され、CENS発生に先行してその南端部の収束に伴う強い降水が断続的に観測された。CENSは、スマトラ島とボルネオ島の間のインドネシア内海域を赤道を越えて地表の北風が強まる現象を指し、コールドサージ (Cold Surge: CS)の南端が赤道を越える事例もあるが、必ずしも北半球側の大陸起源寒気の吹き出しを伴わない場合もあるため区別されている。
6事例のCENSは、北風の深さや形成要因、MJO位相、CSの有無によって固有の特徴を持ち、インドネシア内海における降水変動に対して異なる役割を果たしていたと考えられる。

第263回横須賀大気海洋セミナー

日時
9月19日 (火) 14:00~15:00
場所
Google Meet
発表者
小林 大洋(GOORC)
タイトル
プロファイリングフロートの海氷検知アルゴリズムの評価
要旨
地球気候システムにおける海洋の役割を理解する上で、深・底層水の形成域である南大洋や北部北大西洋における海洋観測は重要である。しかし、これら海域は、海況や気象条件が厳しい、船舶によるアクセスが困難等の理由により、時空間的に偏りなく観測を行うには船舶よりもフロートが適している。フロートは海面に浮上して測位とデータ送信を行うが、これらの海域では冬季に海面が海氷で覆われることがあるため、海氷の有無を判断し、必要ならば浮上を中止(海氷を回避)する必要がある。現在、多くのフロートにはこの海氷検知機能が搭載され、実際に運用されている。しかし、その運用成績について評価が十分になされているとは言いがたい。そこで、実際の海洋観測データを用いて、既存の海氷検知方法の判断の正確さを評価した。

第262回横須賀大気海洋セミナー

日時
9月12日 (火) 14:00~15:00
場所
Google Meet
発表者
川合 義美(GOORC)
タイトル
新青丸KS-22-10航海の概要と観測結果
要旨
科研費新学術領域研究「変わりゆく気候系における中緯度大気海洋相互作用hotspot」の一環として2022年7月に実施された新青丸KS-22-10航海の概要を紹介する。夏季の北西太平洋亜寒帯域は下層雲量やその放射強制力が世界で最も高い領域の一つであり、この時期の雲形成に影響を与える海洋上のエアロゾルの量や特性を明らかにすることを目的として、北海道南西沖(三陸沖)において、この海域では初めてとなる船舶と航空機による同時観測を実施した。
当該海域は2010年頃から海洋熱波現象が頻発しており、2022年夏季には衛星観測開始以降で最高の海面水温を記録した。観測結果はまだ解析中で成果はまとまっていないが、集中観測の背景、概要と一部の観測結果を紹介する。

第261回横須賀大気海洋セミナー

日時
9月5日(火) 14:00〜15:00
場所
Google Meet
発表者
永野 憲(CCOAR)
タイトル
北太平洋亜熱帯域の風によって駆動される津軽暖流流量の経年変動
要旨
津軽暖流の強化が津軽海峡周辺の酸性化の進行を加速させることが指摘されている。そこで、津軽暖流の流量の強化の指標である深浦と函館の潮位差を増加させる要因を調べた。その結果、津軽暖流の流量の変化は、津軽海峡を除く日本本土に沿って一様に変動する潮位変動と関係があることが分かった。この潮位変動は、太平洋東岸から日本東岸まで風応力を積分して求めたスベルドラップ流量を九州南端(30˚N)から黒潮の離岸緯度(36˚N)まで平均した値とよく似た変動パターンを示すことも分かった。風応力から得られた流量に東シナ海と対馬海峡の深さの比を乗じることで地形の効果を考慮し、観測された津軽暖流の流量と同程度の流量変動を得ることも出来た。このことは、北太平洋亜熱帯域30〜36˚Nの緯度帯の風が津軽暖流の強さに影響を与えていることを示唆している。

第260回横須賀大気海洋セミナー

日時
8月29日(火) 14:00〜15:00
場所
Google Meet
発表者
内田 裕(GOORC)
タイトル
KAUSTとの共同研究による紅海でのCTD採水観測結果
要旨
JAMSTECとサウジアラビア・アブドラ王立科学技術大学(KAUST)の共同研究により、2022年2月と2023年5月に、KAUST調査船Thuwalを用いた紅海での調査を実施した。これらの調査の概要と、CTD採水観測で得られた結果について報告する。

第259回横須賀大気海洋セミナー

日時
8月22日(火) 14:00〜15:00
場所
Google Meet
発表者
平野 瑞恵(GOORC)
タイトル
Argoフロート投入状況について
要旨
全球海洋環境研究グループでは、2000年以来Argoフロート投入をすすめ、これまでに1200台以上のArgoフロートを運用している。投入台数は年々減少しているが、性能向上により、一定数のArgoフロートが確実に稼働している。
稼働状況のデータをもとに、バランスの取れたArgoフロートの展開を計画しており、今年度の実施状況と来年度の投入計画を紹介する。また、他国の排他的経済水域(EEZ)へのArgoフロートの流入可能性に対処するために行っているシミュレーション実施状況についても紹介する。

第258回横須賀大気海洋セミナー

日時
8月8日(火) 14:00〜15:00
場所
Google Meet
発表者
藤田 実季子(CCOAR)
タイトル
シグネチャによる大気プロファイルの表現
要旨
ラジオゾンデなどで観測される大気プロファイルは、高度に沿った多次元空間上の経路上の点群と捉えることができ、しばしば私たちはこれらをバラバラの点として扱う。本研究では、Sugiura and Hosoda (2020)を先行研究として、多次元空間上の系列データを順番の情報を失わずに扱うことができるシグネチャ法を用い、大気プロファイルを表現する手段として有用であるか、機械学習モデルを介して評価を行った。九州夏季を対象とし、推定されたシグネチャを評価したところ、大気安定度が不安定と判別される的中率は80%以上であった。

第257回横須賀大気海洋セミナー

日時
7月18日(火) 14:00〜15:00
場所
Google Meet
発表者
纐纈 慎也(GOORC)
タイトル
機械学習手法によるArgoデータQCフラグ付与
要旨
Argoプロジェクトの元で観測網の調整・維持・品質管理・データ公開がなされている昇降式海洋観測プロファイラを用いた海洋観測網は、現代の海洋観測網を支える大きな基盤となっている。このプロジェクトの元で公開されているプロファイルは1月当たり12000プロファイルにのぼる。このプロファイルは、即時品質管理を経て公開された後、詳細な科学的解析に耐える遅延品質管理を行うことでより信頼性の高いデータセットとして公開されている。即時品質管理時につけられた品質管理フラグは、遅延品質管理時に2割以上付け替えが実績としてある。よって、単純に考えても科学的に厳密な解析を用途とする場合のデータ量からみて遅延品質管理に一定のインパクトがあることがうかがわれる。また、近年、フロートに搭載された塩分センサーの時間ドリフトの問題やデータ同化を用いたインパクト解析などによって、遅延品質管理の重要性が改めて明らかになってきており、より素早くより確からしいデータを簡単に見極められればそれに越したことはない。こうした背景をもとに、既存の遅延品質管理の結果を学習することで、比較的即応的に、即時品質管理と遅延品質管理の間を埋めるデータセット作成を可能とすることを目指して機械学習に基づく品質管理フラグ付け手法を開発している。この中で、プロファイル形状を効率的に表現するシグネチャ変換を用いる手法が開発された(Sugiura & Hosoda 2020)。これをより実用的にするとともに、その有用性調査を行ったのでその結果について紹介する。

第256回横須賀大気海洋セミナー

日時
7月11日(火) 14:00~15:00
場所
Google Meet
発表者
土居 知将(GOORC)
タイトル
全球規模の海洋溶存鉄分布に対する沿岸堆積物からの鉄供給の影響の推定
要旨
海洋における溶存鉄の存在は一次生産に重要な影響を与えることが知られているが、観測から海盆スケールでの時空間的な構造や変動を把握するためには、極めてデータ数の少ない現状がある。近年のGEOTRACESでまとめられた海洋溶存鉄の観測データは、限られた海域ではあるが海盆スケールでの鉛直断面分布が見られるようになってきた。
昨年度は、鉄のソース・シンクを組み込んだ溶存鉄の移流拡散モデルを作成し、グリーン関数法を使って溶存鉄の歴史的観測データを同化することで、全球海洋におけるグリッド化された溶存鉄の濃度分布の推定を試み、推定結果から見えてきた溶存鉄の循環における海盆間の違いなどを紹介した。鉄循環プロセスをなるべく単純化した数値モデルを作成して一定の成果が得られたので、現在は推定分布の精度向上に向けた改良を行っている。その一環として、沿岸堆積物からの鉄の供給が海盆スケールの濃度分布へ与える影響を推定するための調査を始めた。これまでの一海盆ワンパラメータで堆積物からの鉄の供給フラックスを推定していたものから変更して、いくつかの沿岸域セクション毎に堆積物からの鉄供給フラックスの推定を試みている。
本セミナーでは、現段階で得られている沿岸域からの鉄供給の推定結果について紹介する。

第255回横須賀大気海洋セミナー

日時
7月4日(火) 14:00~15:00
場所
Google Meet
発表者
長船 哲史(GOORC)
タイトル
横方向の拡散に着目した長期海洋環境再現実験の精緻化に向けた取り組み
要旨
海洋環境再現実験は、英語ではOcean State Estimationと呼ばれる取り組みであり、気候変動・変化に対応した数年以上の時間スケールにフォーカスし、海洋内部で熱や淡水等が保存するよう考慮した再解析に相当する。
海洋データ統合研究グループでは、四次元変分法データ同化手法を応用し、海洋初期値および大気外力のみを制御変数として海洋大循環モデル(OGCM)に対して多様な観測データを同化することで、50年超の海洋環境再現を行っている。これは、時間的・空間的境界条件を入力すると海洋の四次元変動場を出力する複雑な関数であるOGCMを、入力データのみを調整することで、膨大な観測データに対してフィッティングすることに相当する。しかし、その再現性・信頼性は、用いる関数(=OGCM)が持つ表現力に大きく左右される。
現状では、比較的解像度の低いモデルを用いる必要があることから、サブグリッドスケールの拡散をどのように取り扱うかが表現力と関連した重要な要素の一つである。これまでに、主に、鉛直拡散に着目し、研究開発を進めてきた。一方で、他の機関が行なった海洋環境再現実験からは、層厚拡散・等密度面拡散などの横方向の拡散をデータ同化を通じて補正することが、観測とのズレを軽減する上で非常に効果的であることが示されている。そこで、現在、横方向の拡散(lateral diffusion)に着目したOGCMの改良を通じた海洋環境再現実験の精緻化に取り組んでいる。
本発表では、その途中経過について報告する。具体的には、四次元変分法を用いた再現実験に向けた事前調整として行なった、グリーン関数法を用いた線型最適パラメタ推定の結果について紹介する。合わせて、比較実験の結果を用いて、主に太平洋における海洋構造の再現性に着目して、lateral diffusionの重要性や現状の問題点について議論する。

第254回横須賀大気海洋セミナー

日時
6月27日(火) 14:00~15:00
場所
Google Meet
発表者
佐藤 佳奈子(GOORC)
タイトル
Argo塩分プロファイルに見られる高塩分ドリフトの現状およびその影響
要旨
国際Argo計画により2013年以降年間約15万を越える水温・塩分プロファイルが得られるようになった。しかし、Argoフロートに搭載のSea-Bird Scientific社製CTDセンサーに通常より高頻度で急速な塩分ドリフトが発生することが近年発覚し、補正できないほど高塩分にドリフトしたフロートが2015年から全球で徐々に増加し、2021年1年間に取得した全球塩分プロファイルのうち研究に使用できないプロファイルが16%を占めている。センサー製造会社によるCTDセンサーの改修は行われたものの、その改修が実施される前のセンサーを搭載したフロートの多くがまだ稼働中のため、2022年は16.8%と状況はあまり変わっていない。
国際Argo計画では、フロートが観測したプロファイルに対して、簡易的に品質管理によるフラグを付与する即時品質管理と、研究目的で使用できるよう高度な品質管理を施した遅延品質管理の2種類の品質管理を実施している。前者はフロートから観測データを受信して24時間以内に公開されるが、後者は補正を実施することから観測データを受信してから半年程度で公開される。近年発生した急速な高塩分ドリフト問題に伴い、Argo Steering TeamおよびArgo Data Management Teamは、研究目的には遅延品質管理済みプロファイルの利用を改めて推奨した。当グループで公開しているプロファイルデータセットMOAA GPVを、即時品質管理済塩分プロファイルのみ使用したバージョンと、遅延品質管理済塩分プロファイルを主に利用したバージョンを比較することにより遅延品質管理による補正の効果を検証した結果を、高塩分ドリフト問題の現状と併せて発表する。

第253回横須賀大気海洋セミナー

日時
6月6日(火) 14:00~15:00
場所
Google Meet
発表者
山口 凌平(GOORC)
タイトル
溶存酸素収支による全球海洋群集純生産の見積もり
要旨
海洋には生物生産とその輸送によってCO2を吸収し長い時間スケールで貯蔵する、生物ポンプと呼ばれる機構が存在する。生物ポンプによる全球の年間炭素固定量はこれまでに、全炭酸や栄養塩等の関連変数の表層季節振幅や人工衛星海色データから推定がなされてきてはいるが、その推定値には未だ大きな不確実性が存在する。気候値年サイクルのような定常場を仮定することで、生物ポンプによる年間炭素固定量は海洋上層における純群集生産量(生物生産量ー動植物呼吸量)に一致する。この関係性を利用して本研究では、船舶およびフロート観測の溶存酸素プロファイルから海洋上層の酸素収支を計算することで純群集生産量、すなわち生物ポンプによる年間炭素固定量を全球的に見積もった。得られた結果から、現在気候において生物ポンプは年間6.6 PgCの炭素を、翌年の冬季混合によって再び取り込まれることのない層下に輸送していることがわかった。

第252回横須賀大気海洋セミナー

日時
5月30日 (火) 14:00~15:00
場所
Google Meet
発表者
植木 巌(CCOAR)
タイトル
観測データに基づく2019年のインド洋ダイポールイベントに伴う温度躍層変動
要旨
2000年以降で最大規模といえる2019年の正のインド洋ダイポール(IOD)イベントを対象に、IOD東極付近の温度躍層変動を観測データに基づき調査した。
JAMSTECでは2001年10月よりIODの東極に相当する北緯5度東経95度にて表層係留による長期観測を実施しており、これまでに20年程度の海洋上層と海上気象の長期時系列を取得している。
2019年のIODイベント時にはそれに加え、スマトラ島南西沖に別の係留系での観測やインドネシアの観測船によるSunda海峡付近のCTD/LADCP観測も実施しており、それらを合わせたIOD東極付近の温度躍層変動についてその特徴を整理した。

第251回横須賀大気海洋セミナー

日時
5月9日 (火) 14:00~15:00
場所
Google Meet
発表者
金子 仁(MIO)
タイトル
津軽海峡における2014年冬季の極端現象とその背景
要旨
海峡東部は、通常日本海側から流れ込む高温・高塩分の水塊と太平洋側から広がる低温・低塩分水の合流域となっており、複雑な海洋環境変動を呈する。
むつ研究所では、これらの環境変動の理解と予測のために、表面水温・船舶による海峡横断定線観測・海洋短波レーダーによる海峡東部表面流速のモニタリング等を継続している。
2014年の冬季に、むつ研究所の表面水温モニタリングで例年よりも著しく低温な水温が観測された。例年と異なる水塊分布は船舶観測により海峡中央部でも観測された。
これらの極端現象の背景について、JCOPE2M 再解析出力等を用いながら検討した結果について紹介する。

第250回横須賀大気海洋セミナー

Date and time
April 18 (Tue), 14:00-15:00
Place
Google Meet
Speaker
Gandy ROSALES(Tokyo University of Marine Science and Technology)
Title
Formation and offshore transport of intra-thermocline anticyclonic eddies and filaments in the Peru-Chile EBUS under ENSO forcing
Abstract
Recent numerical studies have shown that subsurface anticyclonic eddies are formed through the low potential vorticity (PV) generation caused by the undercurrents flowing over steep slopes in the eastern upwelling systems. These subsurface eddies are found to transport matters over a long distance. As the low PV generation is often associated with submesoscale instability followed by microscale turbulent mixing, they may contain and transport a large amount of nutrients. Thus, understanding the formation mechanisms and material transport of the intra-thermocline eddies and filaments in the Peru-Chile eastern boundary upwelling system (EBUS) contributes to improve the prediction of marine ecosystem responses to the long-term climate variability. Nevertheless, since these subsurface eddies cannot be seen from the satellite, it has been unclear how much transports occur and how these transports vary interannually. In this study, we use reanalysis (0.083 degree) data from Copernicus Marine Service to detect and track subsurface eddies and filaments, to investigate the modulations of the subsurface eddy kinetic energy (SEKE) from 1993 to 2019 including 2 types of extreme ENSO events (1997-1999 and 2015-2017), and to quantify subsurface eddies originated in the PCUC and the nitrates propagated offshore.

第249回横須賀大気海洋セミナー

日時
4月11日(火) 14:00~15:00
場所
Google Meet
発表者
赤澤 文彦(GOORC)
タイトル
AOGEOデータポータルの構築
要旨
AOGEOの紹介とAWSでのサーバー構築ノウハウの共有とその利点、欠点などについて解説する。